研究概要 |
本年度は口腔癌頸部リンパ節高転移株にGreen fluorescent Protein(GFP)遺伝子を安定発現させ、可視化した細胞で、その転移機構を解析することを試みた。保有しているGFP-SAS-T5、GFP-SAS-L1、GFP-BSCCの3株に加え、ACC-2と、ACC-2から樹立され高頻度に遠隔転移を起こすACC-MにGFPを安定発現させることで、GFP-ACC2ならびにGFP-ACC-Mの2株を新たに樹立した。また、舌への同所性移植、頸部リンパ節転移モデルを用い、扁平上皮癌細胞株HSC2、HSC3、HSC4の頸部リンパ節への転移率を検討したところ、HSC3が最も高い転移率(80%)を示した。そこで、本細胞の特性を調べたところ、CXCR4が高発現しており、SDF1を作用させることにより浸潤能の亢進が見られた。また、転移能の低い(30%)HSC2ではCXCR4の発現は軽度であり、SDF1による浸潤亢進は軽度であった。また、HSC-3はAkt-2陽性、HSC-2はAkt-2陰性であり、これらの分子が浸潤、転移に関与すると考えられた。 次に、口腔癌におけるVEGFファミリー(VEGF-A, B, C, D)の発現とリンパ節転移における意味について、実験系ならびに臨床材料における臨床病理学的な関連から明らかにした。9株の口腔扁平上皮癌細胞株HSC2,HSC3,HSC4,KB, SAS, Ho-1-N1,Ca9-22,SCC4,SCC9と臨床組織におけるVEGF-A, B, C, Dの発現を、RT-PCR法、Western Blotting法ならびに免疫組織化学染色により検討した。その結果、VEGF-A, B, CのmRNAは検索した口腔癌細胞株全株に、VEGF-Dは6株に発現を認めた。VEGF-Dの発現の異なる4細胞株を用いた血管新生誘導能の測定においては、VEGF-Dの高発現を認めたKBで誘導能が低く、VEGF-Dの発現が認められなかったHSC3, KBで、誘導能が高かった。
|