研究概要 |
本研究では口臭の質および量を総合的に指標化することのできる,複数の金属酸化物半導体を備えた電子嗅覚装置の開発を目的とした。被検者53名の呼気をガスクロマトグラフィ,官能試験および電子嗅覚装置により測定し,測定方法間の評価値を比較したところ3種類(硫化水素、メチルメルカプタン、硫化ジメチル)の揮発性硫化物濃度の総計と官能試験によるスコアとの間よりも電子嗅覚装置による予測官能スコアと官能スコアとの相関係数は比較的高い値を示した(r=0.735,P<0.0001)。これらの結果より、電子嗅覚装置は揮発性硫化物以外の成分をも認知して測定しているため官能試験によるスコアとの関連性が強い可能性が示唆された。次に、それぞれの評価値と口腔内状態との関連性を調べた。口腔内状態を表す指標として、プラークコントロールレコード(PCR)、歯周病有病歯率(4mm以上のポケットをもつ歯を歯周病有病歯とした)、舌苔スコア(TCS)、舌苔の面積および舌苔の厚みを用い、指標の上位25パーセンタイルをハイリスク群とし,未満をローリスク群とした。官能試験によるスコアはPCR, TCSにおいてハイリスク群の方が有意に高い値となり,揮発性硫化物量は歯周病有病歯率においてハイリスク群で有意に多かった。電子嗅覚装置による予測官能スコアはPCR, TCS,歯周病有病歯率のすべての指標においてハイリスク群で有意に高い値となった。以上の結果より、複数のセンサーをもつ電子嗅覚装置による出力はヒト嗅覚の認知パターンと類似している可能性が高く、さらにヒト嗅覚を利用した官能試験によるスコアよりも多くの口腔内状態と関係する情報を含んでいることが示唆された。
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