研究概要 |
本研究では、新しい口臭の診断法と治療法の開発を目指して、これまで報告されている臭気物質についてその強さと口腔内状態について調べるため、まずアンモニアについて分析を行ったところ、以下の結果を得た。 1)尿素溶解液で洗口した後のアンモニア産生量をポータブルアンモニアモニターで測定したところ、アンモニアレベルと総VSC量の間に有意な相関が認められた。 2)口腔内から採取した歯垢および舌苔中に存在する口腔細菌から産生されるアンモニア量は、VSC中のメチルメルカプタンのレベルと有意な相関が認められた。 3)アンモニアレベルは、歯垢および舌苔の除去後に有意に低下した。 以上の結果から、アンモニアレベルは口腔清掃状態を反映することが示唆された。 次に主な臭気物質の一つである硫化水素について分析を行ったところ、口腔内レンサ球菌により同物質が産生されることを認めた。特にS. anginosusは高い硫化水素産生能を持ち、この産生酵素をクローニングし、生化学的特徴、溶血活性などを調べ、以下の結果を得た。 1)S. anginosusの硫化水素産生酵素は分子量約44,000を示した。また、Km値=1.14mM, Vmax=52.3μmol/min/mgを示した。 2)DL-cystathionine, L-cystine, S-(2-aminoethyl)-L-cysteine, 3-chloro-DL-alanine, およびS-methyl-L-cysteineもL-cysteineと同様にこの酵素の基質となることが認められた。 3)この酵素によって産生された硫化水素は、ヒツジ赤血球のヘモグロビンに変化を起こすことが認められた。 以上の結果から、硫化水素産生酵素の活性を阻害することは、口臭の抑制のみならず、口腔組織への為害作用を抑制するためにも重要であることが示唆された。
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