研究概要 |
歯科治療は従来より疼痛の除去や咀嚼機能の回復に主眼がおかれてきた。これらが重要であることは論を待たないが、顔の構成要素であるとくに口は、情報伝達の主要な手段である言語を発する器官であるだけでなく、言語自体がもつ意味とともにその話し方、口腔周囲軟組織の動きによって微妙な感情をともなった情報を相手に伝える機能をもっている。歯科治療の意義が生理的な領域だけでなく、顔の表情生成の重要な部分を担っている「口もと」の動きにどのように関わっているかを解析し、治療による発語動作や表情の変化予想をパーソナルコンピユータ画面上にコンピュータグラフィックスでディスプレーして、患者説明のために臨床応用しようとすることを本研究の目的とした。 まず顔表面の動きを三次元で捉えるシステムを構築するため、三次元動作解析装置Winanalyseと2台の高速度カメラを購入し、顔表面に計測点を設定し計測誤差の検定を行った。その結果、額と鼻根部に設定した3点で構成される三角形の重心を基準点として、スマイルや発語動作に伴う頬点、上下口唇点、口角点などの動きを正確に捉えることができることが分かった。この計測システムを用いて、以下のような知見を得ることができた。 1,顔の各器官の動きは、スマイル、発語動作いずれにおいても個人において一定のパターンが存在した。 2,「チー」スマイルは自然なスマイルと表情開始時においてわずかな違いがあるが、再現性が高く、表情の研究における試験動作として使用できることが分かった。 3,前歯のかみ合わせとスマイルや発語動作は強く関係しており、上顎前突では下唇、反対咬合では上唇が形態異常を保証した動きを示していることが分かった。 4,表情を視覚的に確認することを目的として各計測点の動きを三次元的に再現するプログラムを開発した。
|