研究概要 |
コールドスプレーイオン源の更なる改良の結果,直交スプレーが効率的イオン化に寄与することがわかり,これを基にスプレー軸の変更とこれに伴うイオン源ハウジング等の設計見直しを行った.この新規イオン源(直交型)を用いて生体基本分子の溶液構造の解析を行った.この結果,特にDNAの解析において顕著な成果が認められた.即ち,細胞の寿命に大きく関わっているとされる,染色体終端部に位置するテロメア構造の解析において,2'-デオキシグアノシンの4量体,いわゆるGカルテットの形成を,ヌクレオシドレベルではじめて観測することができた.さらに,通常のCSI条件下,デオキシグアノシン(dG)を含む4種類のヌクレオシドはともに溶液中,水素結合による連鎖会合体を形成することがわかった.一方,この溶液に1/4等量のNaClを加えると4量体を主とした単位会合体のイオンピークが観測され,連鎖会合体は消滅した.他の塩基ではスペクトルが複雑になるが連鎖会合体が消滅することはなかった.即ち,この動態変化はdGの特性であり,極微量のNa+が存在する通常の条件下,dGは他のヌクレオシド同様,連鎖会合体を形成しているが,これに1/4等量のNaClを加えると4量体,つまりG-カルテットを形成することが確認された. 次にG-カルテットをナフチリジンダイマー(ND)により破壊しようと試みた.NDをG-カルテットが形成している溶液に加えると,G-カルテットのナトリウム付加体の分子イオンピークであるm/z1091は消失し,かわりに,NDに2分子のdGが付加したプロトン化分子イオンピークであるm/z978が観測されるようになる.0.5等量でm/z1091はほぼ消失し,これ以上加えるとNDのみに由来するイオンピークも観測された.即ちND1分子に対して2分子のGが結合することから,この理論値である0.5等量加えることのよりG-カルテットは崩壊することが示された.
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