研究概要 |
FGFはペプチド性の細胞間シグナル分子である。我々はFGF10とFGFl8を同定した。これらのFGFの発現組織,生物活性,遺伝子欠損マウス(FGF-10KO,FGF-18KO)の解析より,FGF10は前駆脂肪増殖因子,FGF18は前駆軟骨細胞増殖因子として脂肪組織,軟骨組織の形成に重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに、本研究では,低分子性のFGFアゴニストの開発のため,1)組換えFGF受容体タンパク質のリガンド結合能を指標にしたFGF様活性物質の新規な探索法の開発と,そのスクリーニングによる新規なFGFアゴニストの探索,2)新規なFGFアゴニストの生物活性の検討を試みた。 組換えFGF受容体タンパク質の細胞外ドミインをBaculovirus高発現系で、大量に発現した。さらに、この細胞外ドミインがFGF10,FGF18と効率良く結合することをBiacore systemを用いて明らかにした。一方、この細胞外ドメインのリガンド結合能を指標にして、Random peptide libraryをスクリーニングした。その結果、数種類の結合ペプチドを同定した。さらに、FGF受容体cDNAを発現ベクターに組込ませ、動物細胞にトランスフェクトし、FGF受容体高発現細胞を作成した。このFGF受容体高発現細胞を用いて、陽性ペプチドをFGF受容体のリン酸化を指標にして調べたところ、一つのペプチドが弱いながら、FGF受容体のリン酸化能を示した。さらに、初代培養脂肪細胞、初代培養軟骨細胞を用いて、そのペプチドの細胞増殖能を調べたところ、弱いながら細胞増殖能を有することが明らかになった。しかし、FGF10やFGF18に比べてその活性はかなり低かった。これまでの研究成果により、上記の手法により低分子性のFGFアンタゴニストが単離することが可能であることが示された。従って、本研究の当初の目的はほぼ達成されたものと期待される。今後は手法を用いて、引き続きスクリーニングし、より高活性な低分子性のFGFアンタゴニストの探索を目指す。
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