最近、遺伝子の転滋調節にDNA塩基対のゆるみ、DNAの部分的な折れ曲がり、そしてDNAの湾曲が重要な役割をはたしていることが判ってきた。中でもDNAの湾曲化は最も注目を集めているものの一つである。そこで、新規マルチ亜鉛フィンガー型アーキテクチャーが引き起こすDNAの局所的構造変化の中で湾曲化に焦点を当て、次のような実験を行なった。(1)転滋因子Sp1のDNA結合領域に存在する三つの亜鉛フィンガー同士をグリシン4個、7個、10個からなるリンカー配列を用いて連結させた新規蛋白質Sp1ZF6(Gly)4、Sp1ZF6(Gly)7、Sp1ZF6(Gly)10を創製し、リンカーの長さの違いが標的塩基配列の構造に及ぼす影響を様々なゲル電気泳動法によって解析した。(2)リンカーのアミノ酸残基数は10に保ち、電荷を有するアミノ酸であるアルギニン、又はグルタミン酸を新たに導入した新規蛋白質Sp1ZF6(GR)4、及びSp1ZF6(GE)4を創製し、DNA構造に及ぼす影響とDNA結合における速度論的特性をSp1ZF6(Gly)10と比較した。メチル化干渉法によりDNA認識様式を、Phasing AnalysisによりDNA構造変化への影響を、さらに、表蔓プラズモン共鳴の原理を利用した測定からDNA結合の速度論的特性を明らかにした。このように、新規マルチ亜鉛フィンガー型蛋白質が標的DNAの湾曲を制御し、特定の遺伝子の転滋裏を調節し、最終的にはその遺伝子の発現裏を調節する新しいタイプの遺伝子制御分子として有望であることを示唆し、分子生物学やゲノム医薬のツールとして期待されることを示した。
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