研究概要 |
1.近年、ポルフィリン誘導体が光線力学的療法(PDT)に用いる光増感剤として注目され、臨床応用されているが、腫瘍選択性が不十分である等様々な問題点があるため、より優れた薬剤の開発が切望されている。本研究では優れた光増感剤の開発を目指して生体的適合性に優れた糖分子を有する水溶性ポルフィリン誘導体の合成を行い、それらの光細胞毒性評価を行った。 2.グルコース、ガラクトース、キシロース、アラビノースを含むパラ体、メタ体の32種の糖連結テトラフェニルポルフィリン(TPP)をテンプレートにより、酢酸亜鉛2水和物存在下、リンゼイ法を応用し合成した。脱保護した16の糖連結ポルフイリンのin vitroでの癌細胞(HeLa cell)に対する光毒性評価を16J/cm^2の光を用い、24時間インキュベートし、HeLa細胞に対して行った。 3.糖部位の立体障害によりメタ置換糖連結ポルフィリンの収率は低かったが、Zn^<2+>のテンプレート法により約3倍の収率となった。フリーベースポルフィリンは4MHClを用いて簡単に脱メタル化することで、ほとんど量論的に得た。p-5a(5,10,15,20 tetrakis[4-β-D-glucopyranosyloxy)phenyl]porphyrin),p-5d(5,10,15,20 tetrakis[4-β-D-arabinopyranosyloxy)phenyl]porphyrin),TPPS(tetraphenylporphyrin tetrasulfonic acid)の3つすべての光増感剤は暗所毒性を示さず、光細胞毒性はTPPS<p-5a<p-5dの順で増加した。これは、細胞取り込みの順に一致し、p-5dがよりよいPDT剤であることを示している。p-5a,p-5dでは、糖部位が異なることにより細胞への蓄積の違いを示しており、今後の展開が期待される。
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