研究課題
基盤研究(B)
ガン治療法の一つである光線力学療法の高度化を目的として、糖鎖の生理作用に着目し、糖分子を連結した光増感剤の合成法の開発およびそのin vitro光毒性試験を行った。本研究で得られた成果は以下の通り。1.糖鎖連結ポルフィリン類の効率的合成法の確立…従来行われているLindsey法によるポルフィリン誘導体合成では、フェニル基のメタ位に糖分子を連結した化合物の合成が困難であった。そこで、Zn^<2+>イオンをテンプレートとする合成ルートを新たに開拓した。また、クロリン誘導体の合成において不純物として含まれるポルフィリンおよびバクテリオクロリン誘導体からの分離精製法を確立した。2.糖鎖連結ポルフィリン類の親疎水性評価法の確立…薬剤の親疎水性は薬物動態学的に重要な特性の一つである。通常、n-オクタノールと水との間の分配係数の対数値で評価されるが、光増感剤のように会合体を形成しやすい化合物には不向きである。そこで逆相HPLCにより親疎水性を評価する方法を確立し、親疎水性が連結した糖の種類により変化することを見いだした。3.糖鎖連結ポルフィリン類の腫瘍細胞による取り込み量の定量…光毒性試験の実施に当たりまず薬剤の腫瘍細胞んよる取り込みを評価した。結果として連結した糖分子の種類によって取り込み量が変化することを明らかにした。また、取り込み量と薬剤の親疎水性との間には明確な相関がみられないことが分かった。4.糖鎖連結ポルフィリン類のin vitro光毒性試験…取り込み量の大きな糖連結ポルフィリンおよびクロリン誘導体について、取り込み量と光毒性との間の関係を調べるために準備的な光毒性試験を行った。その結果、取り込み量の増加が直接光毒性の向上に結びつかないことを明らかにした。このことは、従来推測されてきた取り込み量依存型光毒性が間違いであることを示している。
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