研究課題/領域番号 |
13557212
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
小林 進 東京理科大学, 薬学部, 教授 (70101102)
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研究分担者 |
室伏 きみ子 お茶の水女子大学, 理学部, 教授 (00103557)
内呂 拓実 東京理科大学, 薬学部, 講師 (00307711)
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キーワード | 環状ホスファチジン酸 / リゾホスファチジン酸 / 癌転移 / 癌細胞の浸潤 / アポトーシス誘導作用 |
研究概要 |
室伏らによって細胞増殖を抑制する物質として発見されたPHYLPAはグリセロールとして環状リン酸ジエステル構造を有する初めての物質である。我々はこれまでにPHYLPAの構造決定、合成法の確立、各種類縁体の合成と機能評価に関する一連の研究を通してPHYLPAの有する様々な生理作用を明かにしてきた。その過程で、PHYLPA及びその類縁体(環状ホスファチジン酸:cPAと総称)が癌細胞の正常細胞への浸潤を抑制し、さらに癌細胞の転移を強力に抑制することを見いだした。cPAは生体内で機能する分子であり、細胞毒性は殆ど認められないことも確認している。そこで本研究は、cPA構造に基づく癌の転移抑制剤の開発を目的とした。 本年度は、浸潤抑制作用で最も高い活性を示し、実験的肺転移の実験でも効果的であったPal-cPAについて、ボンベシンとアゾキシメタンを投与して癌を発生させたラットを用いて転移抑制作用の長期にわたる評価実験を行った。現在、データの解析中であるが、有意な差を確認することができた。また、酵素的、化学的な安定性の向上を意図して3位酸素原子を炭素原子に置き換えた3-0-カルバ誘導体の合成と評価を行った。ベンジルグリシジルエーテルにメタンホスホン酸のリチオ体を反応させ、引き続き環化させることによって重要合成中間体を得た。このものに種々の長鎖アシル基を導入する一般合成法を確立することに成功し、対応する3-0-カルバ誘導体を合成した。これらの癌細胞の浸潤抑制作用を浸潤モデル系を用いて評価したところ、対応するcPAに比べて遥かに高い浸潤抑制作用を示すことが明らかとなった。特に、アシル基としてパルミトレイン酸やオレイン酸といった不飽和脂肪酸を導入したカルバ体は、Pal-cPAよりも数十倍高い活性を示した。
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