研究概要 |
血液透析に用いられるホローファイバーを構成する様々な高分子材料と血液成分の接触により,補体の活性化,血小板や白血球の粘着および活性化,活性酸素やサイトカインの産生等が誘導され透析の副作用に結びつくことが報告されている。本研究では,血液透析に使用されている各種高分子材料と血小板および白血球との相互作用,およびそれにより誘導される活性酸素産生について解析した. 【方法】(1)血小板,好中球のホローファイバーへの接着:血小板および好中球をBCECF-AMにより蛍光標識した.標識細胞を血漿に浮遊させ,細断したホローファイバーと37℃,1hインキュベートした.非接着細胞を洗浄後,ホローファイバーに接着した細胞を溶解し,試料の蛍光強度を測定することにより接着細胞数を算定した. (2)ホローファイバーとの接触による好中球の活性酸素産生:好中球を自己血漿または多血小板血漿(PRP)に浮遊させ,細断したホローファイバーと37℃でインキュベートした.30分後,DCFH-DAを加えさらに30分インキュベートした.その後,好中球の産生する過酸化水素により酸化され生じたDCFの蛍光をフローサイトメーターを用い測定した. 【結果と考察】(1)血小板のホローファイバーへの接着は,親水性が高い素材に比べ,疎水性が高い素材において高かった.一方,好中球の接着は,親水性/疎水性との明らかな相関はなかった. (2)好中球を各種高分子材料とともに培養したときの活性酸素産生を調べたところ,血小板接着活性の高かった素材においては,血小板非存在下(血漿に浮遊させたとき)に比べ,血小板存在下(多血小板血漿に浮遊させたとき)で,より高い活性酸素産生が認められた.一方,血小板接着活性の低かった素材では,血小板存在下および非存在下にかかわらず活性酸素産生量は低く,両者に大きな差異は認められなかった.
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