研究概要 |
(1)ヒトorganic anion transporting Polypeptide -2(OATP2)およびMultidrug resistance associated protein -2(MRP2)共発現系の構築 ヒト肝における薬物輸送を簡便に評価する系として、薬物の血管からの取り込みおよび胆管への汲み出しのそれぞれに関与しているOATP2およびMRP2を、極性細胞として既に樹立されているMDCK細胞に導入した発現系を構築した。OATP2およびMRP2の局在を免疫染色法を用いて調べたところ、それぞれbasal, apicalに局在していることが確かめられたことから、今回構築した発現細胞は、肝における方向性のある薬物輸送を評価する系として用いることが可能であることが示唆された。実際に、両者の典型的な基質であるestradiol 17β-D-glucuronideおよびpravastat inの輸送を見たところ、vectorのみを導入したMDCK細胞やOATP2のみを導入した細胞に比べて、basalからapical1への有意に高い輸送が見られた。 (2)ヒトorganic cation transporters(OCT1, OCT2)発現系の構築 有機カチオン輸送担体であるOCT1およびOCT2の発現系を構築し、各種ビグアニド系抗糖尿病薬の肝および腎への輸送に対する関与について調べた。この結果、今回用いたビグアニド系抗糖尿病薬(metformin, buformin, phenformin)のすべてがOCT1, OCT2の両方に基質として認識されることから、これらの薬物の肝への輸送に対して、OCT1が、腎への輸送にはOCT1, 2が関与している可能性があることが示された。また、OCT1を介した肝への高い取り込みが、乳酸アシドーシスの副作用の一因になっている可能性があることも示唆された。
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