研究概要 |
本年度の目的は,parchorinノックアウトマウスを作成するため,マウスparchorinの遺伝子構造を明らかにすることであった.前年度マウス胃粘膜から精製したparchorinから決定したペプチド断片のアミノ酸配列,及びデータベースに現れたマウスゲノム情報の部分配列からマウスparchorinのプライマーを設定し,マウス脈絡叢mRNAからRT-PCRによりクローニングを行った.その結果,マウスparchorinと思われるcDNAの全塩基配列を決定することができた.全長596アミノ酸とウサギ(637)および最近データベース上で明らかになったヒトparchorin (665)に比べると短いが,C末端のCLIC共通配列はほとんど保存されており,また全体の等電点や水溶性も近いものであった.興味深いことに,ウサギN末端配列に特徴的であった,SVDAGGの15回反復配列は,ヒトparchorinではSVEAEGRVGDの11回反復配列に変わっていたが,マウスには,相当する反復配列が存在しない,もしくは反復配列の規則性がかなり乱れていると考えられた.ウサギの配列で決定したカゼインキナーゼII3つののリン酸化部位83,338,393番目のセリンのうち,83番目はほぼ保存されていたが,他の2箇所は保存されていなかった.従って,この83番目のセリンのリン酸化が最も重要であると考えられた.現在,マウスparchorin特異的配列に対する抗体,マウス・ヒトparchorin共通配列に対する抗体,さらにマウスparchorin全長に対する抗体をウサギに作成中である.また,現在マウスゲノム配列から,parchorin遺伝子地図を作製し,ノックアウトマウス作成のためのデザインを行っている所である.15年度中にはノックアウトマウスが誕生する予定である.
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