研究概要 |
脳浮腫モデルの確立とNCX阻害薬の作用:脳浮腫はアストログリアと脳血管内皮細胞により構成される血液脳関門の破綻により引き起こされる。このアストログリアを標的とした脳浮腫改善薬の評価系確立を目指し、本年度は、任意の脳部位で傷害を惹起できるリージョンジェネレーターを用いた浮腫発生の基礎的検討を行なった。ラット中脳での55℃,1分間の熱損傷は、傷害後6-48時間で傷害側大脳皮質の水分含量を増加させた。この浮腫形成は、傷害周辺部のアストログリアおよびミクログリアの活性化を伴うことが示された。またエバンスブルーおよびフルオレセインNaをマーカーとした透過性の測定、および血清アルブミンに対する免疫組織化学的検討は、熱傷害後直ちに血液脳関門透過性が亢進することを示した。Na/Ca交換輸送(NCX)の阻害薬であるSEA400は、熱傷害後のラット大脳の水分含量の増加および血液脳関門透過性の亢進を抑制した。これらの結果は、NCX阻害が脳傷害時の浮腫の形成を抑制させる一つの手段になる可能性を示唆する。 アストログリア由来神経栄養因子産生に対する新規脳機能改善薬の作用:脳傷害後の神経系の再生は、アストログリアが産生する種々の神経栄養因子により促進される。そこで傷害脳の機能回復を促す薬物として開発されたT-588および新規ピペラジルベンズアミド誘導体の神経栄養因子産生への作用を検討した。これらの化合物はラット培養アストログリアにおけるBDNFおよびGDNFmRNAの産生を増加させたが、NGFおよびbFGFの産生には影響しなかった。
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