アストログリア由来神経栄養因子産生に対するエンドセリン受容体刺激薬の作用:脳傷害後の神経系の再生は、アストログリアが産生する種々の神経栄養因子により促進される。脳損傷時に発現が増加するエンドセリン'(ET)神経栄養因子産生作用を検討し、これが、glial cell line-derived neurotrophic factor(GDNF)およびbrain-derived neurotrophic factor(BDNF)の発現を促進させることをmRNAおよびタンパクレベルでの観察で明らかにした。また、ET_B受容体アゴニストのラット脳室内投与は、大脳・海馬および線条体でGDNFおよびBDNFを各々増加させた。アストロサイトにBDNFの発現機構について検討し、アストロサイトではBDNF遺伝子のexon3およびexon4を持つmRNAのみが存在することが示された。ETによるexon3 BDNF mRNAの増加はERK、Pl-3 kinaseおよびCa/calmoduin kinaseの阻害薬で生じなくなり、これらのシグナル系の関与が示された。一方、exon4 BDNF mRNA発現ではCa/calmodulin kinaseの関与が示された。各々の発現に関わる転写因子について検討し、exon3発現にはCREBが、exon4には(C/EBPβの活性化が関与することを明らかにした。 新規脳機能改善薬の作用点の解明:培養神経細胞に対して傷害からの保護作用を有する新規脳機能改善薬T-588のラットへの投与が、海馬でのERKの活性化を生じることを示した。また、新規ベンズアミド誘導体であり抗健忘作用を持つFK960が、培養アストロサイトでの転写因子CREBの活性化を惹起することを明らかにした。これらの作用は、脳機能改善薬としての働きに関連すると考えられる。
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