研究概要 |
4種のトリフェノジオキサジン(TPDO)と1種の銅フタロシアニン(CuPc)反応染料について、好気性条件下におけるRose Bengal水溶液に浸漬したセロハン上で光増感酸化退色を調べた。4,11-ビス(ビニルスルホニル)TPDO染料の光酸化退色速度は、3,10-ビス(二置換トリアジニルイミノエチルイミノ)TPDO染料のそれよりも小さい。TPDO染料の光増感性は非常に小さく、これらの染料のセルロース上における高い耐光性を決めている。しかし、4種の染料間の耐光性の差異は、一重項酸素との反応のしやすさの程度が決めている。TPDO染料の高耐光性は、励起状態からの内部変換による失活の効率が非常に高いためである。 7種(1種のジフルオロモノクロロピリミジン及び6種のモノクロロトリアジン)反応染料で染色したセロハンからの染料の脱落を、テトラアセチルエチレンジアミン添加した過ホウ酸ナトリウム水溶液(BS 1006 UK-TO試験法による)中、60℃で調べ、UK-TO試験による染料脱落機構を検討した。これらの染料の脱落は、染料-セルロース間結合のアルカリ分解による寄与が最も大きく、色素母体の酸化分解の寄与は小さい。UK-TO溶液中の過酢酸の発生は溶液調整の初期に生ずること、溶液のpH変化も初期に大きいことも確かめた。 染料、染色物の人体に及ぼす影響はもとより、精練、漂白、染色の各工程から排出される廃水(着色、電解質、重金属、COD、AOX等)、廃ガス、廃棄物が地球環境、生態系(エコロジー)に与える懸念が高まり、これらへの対応・対策が真剣に議論され実行に移されている。昨年からPRTR法が実施され、21世紀においては"エコロジーをふまえ、いかに人と地球が共生していくべきか"という事がますます大きなテーマとなってくる。ここでは、まず染料開発の歴史、今後の繊維、染料の需要動向をレビューし、染料メーカーとして今後取り組むべき安全性・エコロジー、技術革新性について記述した。
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