研究概要 |
気楽な会話を建設的な会話に導くシステム(Constructive Conversation Support System : CCSS)を開発し、中学校の理科の授業で実証実験を行った。CCSSを用いたグループ討論では,リード文を選択することで会話が活性化し,積極的にアイディアを育て合い,共同で,建設的に,新しい発想,妥当な推論,適切な実践を生み出す生徒の発話が見られた。そして,グループ討論する過程で,新たな疑問や問い直しが増加し,さらに討論が深まるとともに,生徒たちは互いの善さを認めるなど相互に作用し,グループ討論による協調学習支援を行うことができた。さらに,討論の可視化により,教師が適切な支援を行うことができるようになった。 本研究は,「ゆるやかに」科学的会話に導く「リード文」と,グループのメンバー相互の会話の流れの「ラベル付きネットワークによる可視化」が,グループの相互の学び合いを促進させ,協調学習を生み出すことを明らかにし,まさに,適切な道具(artifacts)を媒介として,「学び合う共同体」が構成され,それへの参加意識によって学習が動機づけられ,深められることを示しており,協調学習における状況論的アプローチの重要性とともに,その立場からのコンピュータ支援(CSCL)の有効さを検証した。 次年度には、現在すでに開発が進んでいる「ディベート支援システム」を活用した実験授業を行うことと、PDA(携帯情報端末)を利用したCCSSのシステム開発を行う予定である。さらに、学習者のレディネス(学習への構え),提示される課題の特性,学習者の活動の種類などによって,リード文や,教師の介入にどのような違いが生じるかなどについて,多様な学習状況での実験的研究を通して,本システムのさらなる改善を図りたい。
|