研究概要 |
本研究では,触覚ディスプレイの呈示能力を補うことと,力覚と触覚の融合呈示に関する基礎データを得ることを目的として,次の2種類のダイナミック形ディスプレイ装置を新しく開発した.一つは,コンピュータのマウスに分布圧覚を用いた触覚ディスプレイであり,他方は,多関節マニピュレータに分布圧覚呈示機構を搭載したディスプレイである.これらを用いて心理物理実験を行い,分布圧覚ディスプレイを開発していくために必要不可欠な情報である触知ピン間隔の最適値や触知ピンストロークの最小値などを求めた.また,膨大な時間を必要とする心理物理実験を効率よく行うために,調整法を取り入れた実験方法を新しく提案し,その有効性なども検討した.本研究の成果を以下に要約する. (1)ピン径300μmの触知ピンを8x8のマトリクス状に配置した分布圧覚ディスプレイを設計製作し,パソコンのディスプレイに映し出された仮想テクスチャを触察できるシステムを開発した. (2)知ピン間隔が1.0mmと1.8mmの触覚ディスプレイでは,仮想テクスチャ認識の特性はほぼ一致していた.したがって,テクスチャ認識の精度は,1.8mm以下のピン間隔で飽和しており,ピン間隔を1.8mm近傍まで拡張しても十分であることがわかった. (3)触覚ディスプレイの評価実験を効率的に実施できる新しい実験手法として調整法を提案し,本方法により得た閾値とより精度の高い恒常法から求めた閾値がほぼ一致することから,調整法の有効性を明らかにした. (4)触知ピンストロークと弁別閾の関係を実験データより算出し,250μm以下になると弁別閾が大きくなることが明らかになった.このことから,仮想テクスチャを認識できる触知ピンストロークの最少値は250μm近傍にあることがわかった. (5)力制御可能な2リンク・マニピュレータに前述の分布圧覚ディスプレイを搭載した装置を開発し,被験者に格子状仮想テクスチャを呈示してその交差角を調整させる実験を実施した.その結果,マウス搭載形ディスプレイ同程度の閾値を得たことから本システムが十分な呈示性能があることがわかった.
|