研究概要 |
常伝導体(N)-絶縁体(1)-超伝導体(S)からなるMS型超伝導体放射線検出器の有感面積を大きくする方法として,ヒートスィッチ法を考案した.これは常伝導体吸収体とNIS型センサー部分と超伝導体層を介して結合するものである.常伝導体に放射線が吸収されて生成されるホットスポットによって超伝導体が常伝導転移し,常伝導体吸収体の熱がMS型センサーに伝わり,放射線のエネルギー測定が行われる. NIS型超伝導体放射線検出器は他の型の超伝導体放射線検出器よりも幾分エネルギー分解能が劣る.しかし,動作が速い,磁場が不要などの特長があるため,エネルギー分解能がSIS型程度に向上させる方法を量子磁気干渉計(SQUID)を利用して3種類考案した:(1)非対称変調SQUID,(2)超伝導ループを用いたジョセフソン接合マイクロカロリーメーター,そして(3)rf-SQUIDマイクロカロリーメーター,である.これらは常伝導体吸収体と熱的に結合した常伝導層を含むジョセフソン接合を持つ.放射線が付与したエネルギーによる常伝導体の電子温度の上昇によるジョセフソン接合の臨界電流の変化をそれぞれSQUIDによって読み出す方式である.(1)はTarteらによる検出器素子を従来の手法でも製作可能とするためSMS接合とシャント抵抗を用いる提案を行った.(2)では臨界電流の変化に起因する超伝導ループ中の磁束の変化を測定する方法であり,6.2keVのダイナミックレンジに対し,5.8eVのエネルギー分解能が期待できる.(3)の検出器は検出部と読み出し部とが磁気結合しているだけであり,高温部から検出部への熱流入が無く,また配線が不要なためアレイかも容易であり,500x500x2μm^3の銀吸収体を100mKで用いると1.5eVのエネルギー分解能が期待できる.
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