研究概要 |
シトクロムP450は、ベンズピレンやアフラトキシンなどの強力な環境汚染発ガン化学物質、地下水汚染のハロメタン、又、多くの薬物の毒性・薬物活性化に関係する一方で、それらの代謝・分解にも深く関わっている。故に、シトクロムP450による環境汚染物質の代謝・分解を効率良く活用することができれば良い環境修復酵素を構築できる可能性がある。一方、電子の導入、光照射、カルシウムイオン、CO,NO,O_2のような小分子(ガス)や発ガン化学物質の結合により、タンパク質は物理的刺激を感じる(センスする)。その刺激がタンパク構造の変化を誘発し、その変化が光スイッチや分子スイッチ(シグナル)になって触媒活性を制御している酵素やタンパク質も知られている。これらはセンサー酵素・タンパク質を呼ばれ、センサー(シグナル受容器)がスイッチになり、酵素反応やDNA結合反応(転写)がon/offされる。本研究では、まず、カルシウムセンサー酵素でもあるNO合成酵素の電子移動やタンパク-タンパク相互作用について研究した。又、同時に、NO合成酵素のカルシウムセンサードメインとシトクロムP450の活性部位ドメインとのキメラ酵素を構築し、分子スイッチの効率性を調べた。この新規に構築されたキメラ酵素は触媒反応を分子(イオン)スイッチで十分に制御できる環境修復酵素のモデルになることが示唆された。さらに、ヘムの酸化還元(電子移動)センサー酵素であるEc DOSの構造と機能の関係を詳細に調べた。Ec DOSはCO,NOなどのガスによっても反応がスイッチされる分子センサー酵素であることも示唆された。ヘムセンサー酵素である可能性のあるSOULについてもそのヘム周辺構造と反応機構について詳細に調べた。
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