研究概要 |
FRET型蛍光プローブによるチロシンフォスファターゼ(PTP)活性可視化 異なる2波長での蛍光強度を測定しその比(レシオ)を検出するレシオ測定法は誤差を小さくすることができるため,バイオイメージングを行う際に特に有利な測定法である.レシオ測定を行うためには,ターゲット分子との相互作用で励起波長ないし蛍光波長がシフトする特性をもつ蛍光プローブ(レシオプローブ)が必要となる.今回,FRETを利用したレシオプローブ設計法を新規に提案し,その方法に基づいてPTPをターゲットとしたプローブの開発を行った.FRETにおいて,重なり積分は,エネルギー移動効率を規定する因子の一つである.Fluoresceinが吸収特性の異なる2つのコンフォメーションをとることに着目して,重なり積分変化をスイッチとする新規設計法を考案した.フェノール性水酸基に置換基を導入してlactone型となったFluoresceinはCoumarinとの間にスペクトルの重なりを持たないために,FRETは起こらない.標的酵素によって置換基が加水分解を受けると,quinoid型となりCoumarinとの間に大きな重なり積分が生じる.従って,FRETによるアクセプター蛍光が観測されるようになる.PTPによって加水分解されるリン酸基を導入した化合物1は,FluoresceinとCoumarinを繋ぐリンカーの構造をrigidなcyclohexyl基にしており色素団の会合を阻害させてある.水溶液中で1は,PTPの一種であるPTP1Bを添加したところ,Coumarin蛍光が減少し515nm付近のFluorescein蛍光が増大した.PTP活性によって蛍光波長がシフトし,1は酵素反応前後でFRET効率が劇的に変化することが明らかとなった.このプローブを用いて生細胞内のPTP活性変化について可視化解析に成功した.
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