研究概要 |
細胞内コレステロール調節に関与するSREBP(sterol responsible element binding protein),SCAP(SREBP cleavage activating protein), HMG-CoA還元酵素などはERあるいはゴルジ装置に存在する膜蛋白質である。これらの膜蛋白質を機能を保ったままバキュロウイルスに発現させる技術を開発し,それをこれまで困難であった膜蛋白質の抗体作成および相互作用解析に応用する。 本年度の研究により,発現膜蛋白質の収率をあげるための培養条件の検討では,1lのスピナーフラスコに500mlで10%のウシ胎児血清存在下に感染時新鮮培養液を用いる方法が最適であった。またSREBPはSCAPの共感染により内在性プロテアーゼによる分解が抑えられる事が判明した。SCAPはSREBPの分子シャペロンとして働いていると考えられた。内在性プロテアーゼの阻害には50μMのE64が最適であった。大量精製のための可溶化剤の検討を行ない,lysoPCおよびPFOが使用可能であった。特にPFOはそのままNiNTAでのHisタグアフィニティー精製が可能である。G蛋白質共役型受容体であるロイコトリエンB4受容体(BLT1)はバキュロウイルス上で共感染させたGi三量体蛋白質と共役し高親和性の受容体複合体を形成することが確かめられた。 バキュロウイルスを用いて,ヒトSCAPのC端部分ペプチドを発現精製し,マウス免疫後SCAP発現ウイルスを用いて抗体のスクリーニングを行なった。この結果,SCAP全長を認識する抗体の作成に成功し,ウェスタンブロット,免疫組織化学,免疫沈降に使用可能であることがわかった。 バキュロウイルスのgp64に核内受容体をフュージョンさせ,マウスに免疫することによりモノクローナル抗体を作成する方法で10種類の核内受容体に対するモノクローナルを作成した。PPARのα, δ, γ_<1, 2>の各アイソフォームをウェスタンブロットで特異的に識別する抗体の作成に成功した。またこれらの抗体はゲルシフトアッセイ,免疫組織化学に使用可能であることが確かめられた。このようにバキュロウイルスの発現系を用いて,構造を保った膜蛋白質抗原の調整とスクリーニングシステムの構築が可能で,モノクローナル抗体作成に用いる事ができることがわかった。
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