転写開始機構研究に基づく細菌プロモーターの探索法の開発

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13558089
• 研究機関: 国立遺伝学研究所
• 研究代表者: 嶋本 伸雄 国立遺伝学研究所, 構造遺伝学研究センター, 教授 (20127658)
• 研究分担者: 十川 久美子 国立遺伝学研究所, 構造遺伝学研究センター, 助手 (20291073)
• キーワード: 大腸菌RNAポリメラーゼ / プロモーター / abortive initiation / moribund複合体 / 分岐回路

研究概要

一群のプロモーターに対して、大腸菌RNAポリメラーゼは、プロモーターに結合したまま、不活性な複合体を形成する。転写開始からRNA伸長の過程で、長鎖RNA合成にいたる転写複合体と、短鎖RNAを繰り返し解離(abortive initiation)する複合体(moribund複合体と命名された)との分岐した反応経路をたどる。後者は短鎖RNAを一定の頻度で合成・解離し、また、数分で基質存在下でも伸長反応を行わないdead-end複合体に変換する。
従来この分岐回路が無視されていたため、プロモーターは結合親和性と反応の早さのみで分類されていた。このために、プロモーターを塩基配列から予想することの精度は低く実用的でなかった。分岐経路が実質的に少ないT7A1プロモーターの反応経路の解析から、分岐回路の影響は高塩濃度下で減少することが明らかになった。これを用いて、プロモーターの染色体DNAからの実験的選択法が可能になった。
本年度は、年度の後半から認められた経緯から、T7A1プロモーターの反応経路の解析の仕上げと、1,2種のプライマーDNAを用いて、大腸菌クロモゾームDNAの出来るだけ広い領域をPCRにて増幅することを行った。その結果、PCRには、増幅中にゆっくりと温度を上昇させるRamp機働泌須であること、有望なプライマー配列は、大腸菌の全配列で最頻度で出現する10塩基配列のうち、うえから2番目と5番目が有望であることを同定した。また、固定化RNAポリメラーゼを用いるため、β'サブユニットのC末にHisを6つ持つものを構築した。

研究成果

• [文献書誌] Sen.R., Nagal, H., Shimamoto.N.: "Generality of the Branched Pathway in Transcription Initiation by E. coli RNA Polymerase"J. Biol. Chem.. (in press). (2002)
• [文献書誌] Sen.R., Nagai, H., Shimamoto.N.: "Conformational switching of Escherichia coli RNA polymerase-promoter binary complex is facilitated by elongation factors GreA and GreB"Gene. Cells. 6. 389-402 (2001)
• [文献書誌] 嶋本伸雄: "スライディングによるDNA結合のアンテナ効果:1分子観察により発見された分子効果"細胞工学. 20. 666-671 (2001)
• [文献書誌] 嶋本伸雄: "スライディングによるDNA結合のアンテナ効果:1分子観察により発見された分子効果"細胞工学. 20. 666-671 (2001)
• [文献書誌] 嶋本伸雄: "分子生物学・免疫学キーワード辞典第2版"医学書院 編者:永田和宏, 長野 敬, 宮坂信之, 宮坂昌之. (2000)
• [文献書誌] 嶋本伸雄: "Bioscience新用語ライブラリー第二版"羊土社 編者:田村隆明, 山本雅之, 安田国男. (2001)