研究概要 |
従来、転写のプロモーターの存在や強度を塩基配列から理論的に推定することは成功していない。従来の方式では、最も理想的な唯一のプロモーター配列の存在が仮定され,その配列の類似性だけで、プロモーター強度が推定されてきた。しかし転写開始が、複数の反応ステップから出来ているために、プロモーターには、律速段階が異なるための個性があり、その個性ごとに理想配列があるはずである。個性としていままで、結合親和性と反応の早さが知られていた。われわれは、λP_Rプロモーター等でプロモーターに結合したまま、不活性な複合体を形成する分岐経路を発見し、この不活化の起こりにくさが第3の個性になることを明らかにした。 本年度は、1.昨年度に開発した、単一プライマーを用いたPCRによるゲノムバンク作成法を、大腸菌に応用してゲノムDNA断片ライブラリーを作製した。 2.樹脂ビーズに大腸菌RNAポリメラーゼβ'サブユニットC末を固定して(活性は保持される)、ライブラリーを結合だけでなく転写反応の効率で、スクリーンして、4つの条件で2000種類の断片を得た。 3.2000種類の断片をプラスミドに挿入し、断片部分の塩基配列を決定した。 4.全断片をPCR増幅して、in vitro転写を行い、含まれるプロモーターの強度を観測し、強度順にリストを作成した。 5.各条件ごとに、得られた配列の重複度でヒエラルキーをつけ、リストを作成した。 今後2つのリストを比較して、実験条件の補正(RNAの長さ、放射性ラベルのされやすさ)を加えて、同一順を出すようなアルゴリズムを求め、プロモーターの強度を決定する要素を抽出する計画である。
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