研究概要 |
アンチセンスRNAを発現させることにより、センスRNAと結合させ、その翻訳を抑制し、遺伝子機能を阻害できることが知られている。しかし、線虫やショウジョウバエの実験から、2本鎖RNAを発現させたほうが、遺伝子機能の阻害効果が強いことが示され、この現象をRNA interference (RNAi)とよぶようになっている。マウス肝炎ウイルス(MHV)は、遺伝子改変マウスのやり取りが活発化している現在、実験用マウスの管理上最も厄介で汚染確率の高いウイルスである。これを防止するため、RNAi法の利用を考えた。MHVは、細胞に感染後、(+)strand RNAをもとに(-)strand RNAが合成され、これから7〜8種類の、(+)strand RNAが合成され、それぞれの蛋白が翻訳される。したがって、これまで我々が開発してきた遺伝子トラップ法を行うと同時に、MHV耐性を付与するため遺伝子トラップベクター内にウイルスの増殖に関与する蛋白を作るもととなる部分を組み込み、トラップ後に2本鎖RNAを発現させ、MHV抵抗性マウスを作製することを目的とした。この方法が有効かどうかを検定するために、すでにc-crk遺伝子をトラップしているESクローンを用いた。このクローンでは、lox71を含むベクターが挿入されているので、lox66を利用して、逆向きのc-crkを導入することができる。その結果、果たして2本鎖RNAが形成されるかを解析したところ、アンチセンス及びセンスプローブで検出されるRNA,すなわち2本鎖RNAが存在することを示唆する結果をえた。現在、c-crkの機能が疎外されているかどうかを検討中である。
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