研究分担者 |
村上 弘一 金沢大学, 医学部附属病院, 講師 (20242555)
井上 正樹 金沢大学, 医学部附属病院, 教授 (10127186)
大谷 亨 北陸先端科学技術大学院大学, 材料科学研究所, 助手 (10301201)
佐藤 郁夫 チッソ株式会社, 横浜研究所, 主任研究員
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研究概要 |
本研究では,長期埋植を可能とする生体適合性ヒアルロン酸(HA)ゲルの設計を推進し,子宮内膜症の治療を可能とする薬物放出デバイスの創製を目的としている。本年度は,1)ステロイド剤含有3次元架橋HAヒドロゲルのヒアルロニダーゼによる分解挙動の解析、2)HA架橋ヒドロゲルからのステロイド剤放出挙動の解析,3)ステロイド剤含有3次元架橋HAヒドロゲルオートクレーブ滅菌,を行った。 HA(分子量:90,000)とステロイド剤であるダナゾール、界面活性剤(ポリソルベート)、そして架橋剤であるエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDGE)とをアルカリ水溶液中にて混合し、80℃15分間放置してステロイド剤含有架橋ヒドロゲルを調製した。ヒドロゲルの含水率は、反応温度、反応時間、EGDGEの仕込み量を変化させることによって制御可能であった。ヒドロゲル中にダナゾールがミセル状態となって保持されていることを高速液体クロマトグラフィーの解析から確認した。ヒアルロニダーゼ存在下においてこれらのゲルは完全に分解し、その分解速度は含水率によって制御が可能であった。ヒドロゲル中に導入されたダナゾールは、この分解過程が律速となって放出され、非分解時のゲルからの漏出は約1ヶ月で7-8%であった。これのことから、子宮内に発現されるヒアルロニダーゼによってダナゾールを放出制御させる技術を確立した。これらヒドロゲルのオートクレーブ滅菌後には、ゲル中に存在していた菌数は0となり、滅菌前と比較して分解特性に変化はなかった。従って、本HA架橋ゲルシステムはオートクレーブ滅菌使用が可能であり、30分程度の滅菌操作で埋植可能な状態となることを確認できた。以上から,子宮内膜症に利用可能なヒドロゲルデバイス調製技術を確立することができた。
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