研究分担者 |
村上 弘一 金沢大学, 医学部附属病院, 講師 (20242555)
井上 正樹 金沢大学, 医学部附属病院, 教授 (10127186)
大谷 亨 北陸先端科学技術大学院大学, 材料科学研究科, 助手 (10301201)
佐藤 郁夫 チッソ株式会社, 横浜研究所, 主任研究員
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研究概要 |
本研究では,長期埋植を可能とする生体適合性ヒアルロン酸(HA)ゲルの設計を推進し,子宮内膜症の治療を可能とする薬物放出デバイスの創製を目的としている。本年度は,HAに種々の脂肪酸類を導入した疎水化HAを調製し、ステロイド剤であるダナゾールの溶解力を検討するとともに、ラット子宮内膜嚢腫(チョコレート嚢腫モデル)にダナゾール含有疎水化HAを注入し、ダナゾール濃度の推移、HAの分解、そして子宮内膜嚢腫への影響を評価した。さらに、ラット子宮内膜のヒアルロニダーゼ活性を測定し、HA分解との相関について考察を加えた。HA(分子量:90,000)にステアリン酸やグルタリル酸等の脂肪酸を導入し、疎水化HAを調製した。これら疎水化HA1.5wt%のダナゾール溶解性は10mg/mlであったことから、良好な溶解性を確保できることを確認した。ラット子宮内膜嚢腫にダナゾール含有疎水化HAを注入したところ、組織内ダナゾール濃度の上昇が認められた。さらには、投与後の性周期に異常は見られなかったことから、疎水化HAが良好な生体適合性を有していることが示唆された。嚢腫内の子宮膜の萎縮も認められ、ダナゾールの放出効果であるものと考えられた。注入した疎水化HAは2週間程度で消失していたが、ラット子宮内膜のヒアルロニダーゼ活性は子宮内膜症腹水の1/5であったことから、予想よりも活性は低く、疎水化HAの分解は活性酸素によるものと考えられた。しかしながら、ヒトへの応用を鑑みた場合、ダナゾールの放出と組織内への吸収が不十分であったことから、ゲル化も含めた剤形とダナゾール溶解・放出の制御に関して再検討が必要である。
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