研究課題/領域番号 |
13558108
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
医用生体工学・生体材料学
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小林 一清 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (10023483)
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研究分担者 |
三浦 佳子 名古屋大学, 工学研究科, 助手 (00335069)
西田 芳弘 名古屋大学, 工学研究科, 助教授 (80183896)
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研究期間 (年度) |
2001 – 2002
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キーワード | 炭水化物 / 生体機能材料 / 高分子物質 / 分子認識 / インフルエンザウイルス / ベロ毒素 / ルテニウム金属錯体 |
研究概要 |
糖鎖は糖脂質や糖タンパクの形で細胞表面上に広く存在し、情報の受容、毒素やウィルス感染など、生体内の様々な分子認識現象において重要な役割を果たしている。中でもシアロオリゴ糖鎖は、インフルエンザウィルスと強い親和性がある。また糖鎖は、それらが密集し糖クラスター構造を形成するとウィルスやレセプター分子と強く相互作用するので、近年、人工糖クラスター構造に注目が集まっている。糖クラスターの骨格として、トリスビピリジンルテニウム錯体(Ru錯体)に注目した。Ru錯体は化学的に安定であり、酸化還元活性、及び高い量子収率の蛍光性を有している。 末端にα-グルコースを有するビピリジンリガンドを合成し、Ruと錯形成させ、Ru錯体を骨格とする糖クラスター化合物を構築した。次に、インフルエンザウィルスと高い親和性を有するシアロオリゴ糖鎖(YDS-Asn)を基質として、酵素Endo Mの糖転移反応によりRu錯体にシアロオリゴ10糖を転移させた。また、分子認識能を評価するために、レクチン及びインフルエンザウィルスと凝集阻害実験を行った。さらにウィルスセンサーとしての機能を評価するために、インフルエンザウィルス添加による蛍光変化を測定した。 Endo Mの糖転移反応により、Ru錯体のα-グルコース末端にシアロオリゴ糖鎖が1個及び2個転移した複合体((YDS)-Ru conjugate)が得られた。このconjugateはYDS-Asnと比較して、SSA(NeuAcα2-6Gal特異的レクチン)においては約10倍、インフルエンザウィルス(A/Memphis/1/71(H3N2))においては約100倍も高い阻害活性能を有していた。Ru錯体に結合しただけで飛躍的にウィルスとの親和性が増大したのは、錯体の電荷による静電的相互作用及びアグリコン部位の疎水性相互作用などが原因と考えている。また、このconjugateの溶液にウィルスを添加すると、蛍光の減少が観察された。このことから、今回合成した(YDS)-Ru conjugateはインフルエンザウィルスセンサーとしての利用が期待できる。
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