研究概要 |
チタンサファイアレーザーの基本波(近赤外光)と,第二高調波(青-紫外光)を光源とした多焦点CARS顕微鏡システムを開発した. 装置開発 CARS顕微鏡では,2波長の光が必要とされる.また,非線形光学現象であるCARSを引き起こすに十分な高い尖頭出力,分子振動を識別することが可能な数cm^<-1>の波長幅,分子振動スペクトルを得るに十分な波長可変域が必要とされる.そこで,同期した2台のピコ秒チタンサファイアレーザーを光源としたシステムを構築した.また,この2波長の光をマイクロレンズアレイに導入して多焦点化させ,多焦点CARS顕微鏡を構成した.さらに,両レーザーを非線形光学結晶に導入し,その第二高調波を励起光源にも用いることができるようにした. 紫外・近赤外励起の比較 紫外励起と近赤外励起の比較実験を,ポリスチレンビーズならびに赤血球を試料として比較実験を行った.ポリスチレンビーズでは,近赤外励起でのみ明瞭なイメージとスペクトルを観測することができた.これは,使用レーザーの波長(紫外および近赤外)での吸収がなく,電子共鳴効果が起きなかったためである.紫外励起で観測されなかった理由は,紫外域での励起レーザー光強度が近赤外にくらべ約10分の1であったためたと考えられる.これにたいして,赤血球では近赤外励起では非共鳴バックグラウンドの影響が大きく,イメージは観測されるものの明瞭なスペクトルを得ることができなかったが,紫外励起ではヘモグロビンのバンドを観測することができた.これは,ヘモグロビンの吸収による,電子共鳴効果によるものと考えられる. 以上から,電子共鳴効果による高感度化をCARS顕微鏡で利用することが重要であることが分かった.
|