研究概要 |
本研究は,術前に頭皮上から近赤外光を用いた光多点計測法(光トポグラフィー)によって測定する脳機能イメージングと,術中に露出した脳組織を対象に直接撮像をおこなう測定系で得られる脳機能イメージングにおいて,内因性信号であるヘモグロビン濃度変化がどのように画像化されているかという連関性を検討するものである.初年度は,前者については時間分解計測による脳組織表面の光信号感度分布の推定,後者についてはマルチスペクトル画像解析に組織散乱が与える影響について検討した. 光トポグラフィーについては,ヒト前額部を対象に時間分解計測をおこない,頭部を伝播する光の飛行時間を実測した.この結果を,MRI画像をもとに作成した頭部モデルを対象に,モンテカルロシミュレーションで光伝播解析をおこなった結果と比較した.両者の結果は一致しており,構築した理論モデルの妥当性が検証された.そこで,このモデルを用いて,入射,検出ファイバーの間隔や頭蓋骨などの組織の厚さが変化したときに,脳組織表面における光感度分布がどのように変化するかという点について検討をおこなった. マルチスペクトル画像に関しては,ヘモグロビン濃度と酸素飽和度が組織中で分布をもつ理論モデルを考えた.このとき,光の組織中における伝播距離が波長依存性を有することを考慮した.このモデルに対して主成分分析をおこなったところ,第1主成分がヘモグロビン濃度,第2主成分が酸素飽和度と関連していることが示された.ただし,これらは光の伝播距離の影響を強く受けていた.この結果をもとに,理論モデルの分光反射画像に対して重回帰分析を行ったところ,ヘモグロビン濃度と酸素飽和度の分布を独立に解析することができた.以上の結果を踏まえ,ヘモグロビンを混入したイントラリピッド懸濁液とフタ脳組織を対象にマルチスペクトル画像を取得する実験の準備を現在進行中である.
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