研究概要 |
(1)マルチスペクトル画像からの信号起源の推定 術中に開頭した状態で脳組織を撮像することを想定し,脳組織モデルのマルチスペクトル画像をモンテカルロシミュレーションによって作成した.マルチスペクトル画像を主成分分析することによって,脳組織の内因性信号を弁別して推定する方法について検討を行った.血液濃度を5〜15%,酸素飽和度を60〜100%に設定したマルチスペクトル画像を解析した結果,第1主成分は血液濃度,第2主成分は酸素飽和度に対応していることが明らかになった.そこで,脳組織中の動・静脈,脳機能賦活部位などを模擬したマルチスペクトル画像を,第1主成分と第2主成分を用いて重回帰分析した.その結果,血液濃度と酸素飽和度の分布に対応した解析画像を得ることができた.しかし,第2主成分は画像のノイズに影響を受けやすく,実際の脳組織画像を対象とした場合,酸素飽和度の分布を求めるためには,さらに検討が必要であることが示唆された. (2)光信号の空間感度分布特性を考慮した脳機能イメージ再構築アルゴリズム 光トポグラフフィーの画像再構築アルゴリズムに光信号の空間感度分布を利用する手法について検討を行った.簡単のため,光ファイバアレイは1次元的に配置することとして,脳組織が直径10mmの範囲で賦活したときに,各入射・検出ファイバ対で得られる光信号をモンテカルロシミュレーションで求めた.これらの光信号から,従来のマッピング法と空間感度分布を利用する方法によって,脳機能賦活部位を算出した.従来のマッピング法では,光ファイバアレイの配置間隔を狭くして空間分解能を向上させても,得られた賦活部位の半値幅は20mm程度となり,賦活部位が実際よりも広がって推定された.これに対して,空間感度分布を利用した再構築アルゴリズムを用いると,実際の賦活部位とほぼ等しい半値幅の賦活部位が推定された.
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