研究概要 |
研究計画に従い、装着型人工腎臓設計のための理論計算を行った。また、試験モジュールを用い、水系性能評価実験を施行するとともに、albuminを浸透圧物質とした新しい腹膜透析システムを想定したイヌex vivo実験を施行し、除水特性、溶質除去特性、安全性等について検証した。 1)装着型人工腎臓の設計・開発 装着型人工腎臓として中空糸型ダイアライザを想定したが、中空糸内に腹膜透析液が流れるため許容圧力損失を50mmHgとして計算したところ、膜面積0.5m^2、中空糸内径87μm、ハウジング外径2.0cm,有効長112mmの超小型人工腎臓が開発可能であることが明らかとなった。実際にこのダイアライザを製造するには研究分担者服部博行の所属する(株)ニプロに、多額の初期投資(中空糸ノズル金型の制作)を要するため、本研究では商品化されている中空糸(内径200μm)使用を前提に設計計算し直し、小型試験モジュールを試作した。 2)予備実験 urea等のマーカー物質が体内で分布するまでの非定常の影響を把握するため、イヌを用いた予備実験を行った。すなわち、尿管結紮してイヌ静脈内へマーカー物質として高濃度urea(分子量60)、creatinine(同113)を含有させた試験液を注入し血中濃度、腹腔内濃度の経時変化を調べた。その結果、2時間でほぼ平衡に達したことを確認した。血中の濃度の経時変化から腹膜を介した物質移動係数を推算した。 3)透析実験 装着型人工腎臓を用いた透析液再生型腹膜透析として、連続的再循環腹膜透析(CRPD)システムを想定した透析実験を尿管結紮して2日経過したイヌにたいし施行した。研究分担者服部博行の所属する(株)ニプロが試作したダブルルーメンカテーテルを用いた腹膜透析液の再循環を行い、CRPDを施行した。その結果、controlとした従来型腹膜透析に比べ、有意に高いurea,creatinineの除去効率が得られた。今後albuminによる除水特性について検討していく所存である。
|