本研究では、ミリ波を用いたITS車々間通信用の高速(25〜30Mビット/秒)ディジタル無線通信実用化方式の提案を目的とした。特にデジタルFM最尤系列推定等化器の理論を適用し、従来にはない耐マルチパス特性を有する高ビット速度車々間無線変復調システムの実用化の為の研究を行った。 平成13(2001)年は、GMSK信号やGFSK信号に対するターボ等化周波数検波方式の提案を行った。提案方式では、内側ISIの復号に軟入力/軟出力のMAP (BCJRアルゴリズム)、Log-MAPあるいはMax-Log-MAPアルゴリズムを適用した(研究代表者岩波)。また周波数76.5GHz、ビーム幅4度、走査角±15度のマルチビーム誘電体レンズアンテナの設計、試作及び評価を行い、所望の特性を得ることができた(研究分担者木田)。平成14(2002)年度は、もう1つの提案方式であるFSKエネルギー検波系列推定方式に関して、2値FSKエネルギー検波系列推定方式の研究成果をまとめた。また多周波FSKエネルギー検波系列推定方式の開発を行った(研究代表者岩波)。また前年度にシミュレーション実験用として購入したMathworks社製のMatlabとDSPハードウェアーであるカナダLyr Signal Processing社のSignal Masterを用いて受信機ハードウェアに関するcomplexity(複雑さ)の評価を行った(研究代表者岩波)。さらに車々間通信や路車間通信に使用可能な路面方向への放射を少なくするためエレベーション指向性にコセカント2乗特性を持たせてた60GHz帯レンズホーンアンテナを設計試作した(研究分担者木田)。平成15(2003)年度は、提案方式の1方式である多周波FSKエネルギー検波系列推定方式の詳細な解析・設計を行った。前年度に16周波を用いた周波数ホッピング系列推定方式の原理の提案は行っていたが、より詳細な検討と方式の精錬化を行った(研究代表者岩波)。また60GHz帯レンズホーンアンテナのレンズに整合層を設けることでアンテナ設計値の改善を行った(研究分担者木田)。以上の様に本研究期間の3年間に渡り、主として「GMSK及びGFSK信号に対するターボ等化周波数検波方式」及び「多周波(16周波)FSKエネルギー検波系列推定方式」という2つの伝送方式の開発、DSPなどを用いたハードウェアー複雑さの検討、車々間通信用のレンズホーンアンテナの試作設計等を行い、ミリ波を用いたITS車々間通信用高速無線データ通信方式の試験研究を行うことが出来た。本研究で得られた成果は約17編の学会論文や研究報告として纏められている。
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