研究概要 |
本年度は,(1)タンパク質のC末端ラベル化,(2)タンパク質のマイクロアレイ化,(3)タンパク質間相互作用の解析という各ステップについて基盤技術を確立するために,相互作用することが知られているFos-Junをモデルタンパク質として条件検討を行った. (1)C末端ラベル化法の効率化 まず,ラベル化効率に対するラベル化試薬の構造の影響について検討するために,ピューロマイシンと種々の蛍光色素(フルオレセイン,ローダミングリーン,Cy5)との間にリンカーとして(デオキシ)シチジル酸を1〜2個挿入した化合物を合成し,ラベル化効率を調べた.その結果,いずれの色素の場合も,タンパク質のC末端をラベル化することができ,特に,デオキシシチジル酸1個のリンカーをもつ化合物は,リンカーがないものに比べ,最大140倍の高効率が得られた.次に,非翻訳領域の配列を変えてラベル化効率を詳細に検討した結果,これまでより5〜6倍の効率でラベル化できる配列を見い出した.さらに,無細胞翻訳系の種類の影響について調べたところ,東洋紡社製の小麦胚芽抽出液は,プロメガ社製の小麦胚芽抽出液やウサギ網状赤血球抽出液に比べてラベル化効率が数倍高いことが分かった.以上により,効率的なC末端ラベル化の条件をほぼ確立することができた. (2)タンパク質のマイクロアレイ上への固定化と相互作用の確認 ビオチン,Hisタグ,ストレプトアビジン,GSTなどを付加したFos, Junタンパク質をマイクロアレイヤーを用いてスライドガラス上にスポットした.いずれのタグの場合もタンパク質がきちんと固定化されていることを,蛍光標識抗体を用いて確認した.さらに,C末端蛍光ラベル化したFos, Junを振りかけ吸着・洗浄した後,蛍光スキャナーよってタンパク質間相互作用を検出することに成功した.今後は,他のタンパク質について種類を増やして条件検討を行う予定である.
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