アジア地域(日本、インドネシアのバリ島、ジャワ島、インド、中国)の死生観、ターミナルケア観を、文献法、およびインタビュー法により面接調査し、インタビューについてはテープ起こしを行った。死生観、来世観については、個々人で多様な意識が見られるものの、地域、文化によって大きな差異が認められる。例えば、インド、バリにおいて火葬をし、灰を河や海に流すという文化志向性は、自然や神との一体化という発想を背景にしていると思われる。一方、イスラム教における土葬志向性は、歴史的、宗教学的のみならず、Folk beliefにおいても確認され、これらは復活の思想を背景にすると考えられる。また、一神教においては、死者との直接対話、供物などが抑制されていること、ヒンドゥー文化圏の一部においては、死者と直接対話することが、大衆レベルでも確認された。ヒンドゥー圏の一部と日本、中国との共通性が見られる。輪廻については、イスラム、キリスト教圏においては否定されることが多い。今後、インタビュー法を継続するとともに、これらを含んだ質問紙を作成し、各地域で調査を行う予定である。一方、これらも、伝統文化と外来文化の混合やシンクレティズムがみられ、シンクレティズム自体も尺度化する必要があることが明確になった。今後、死生観尺度、シンクレティズム、死後変容、審判意識などの質間紙を作成し、アジア各地の比較を行う予定である。 また、ターミナルケアの文献を収集し、また仏教ホスピスのビハーラ、ヒンドゥーの死を待つ家などにおける死の受容、死に向き合うプロセスとその環境について知見を得ている。これらの背景となる死生観、自然観、家族文化、保健医療福祉などを明らかにする予定である。
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