引き続きアジア地域(日本、インドネシアのバリ島、ジャワ島、インド、中国)の死生観、ターミナル観を、文献法、およびインタビュー法による面接調査により行うとともに、質問紙の予備調査を実施した。これらを元に、いくつかの尺度(空想対話尺度、輪廻、終末論、死者との対話、神との対話、家族の死、抑うつなどの尺度)を含んだ質問紙調査票を作成し、統計的検討、英語とインドネシア語への翻訳を開始した。 文献法では、アジアと日本の死生観の歴史を広く集め、インタビューの一部とともに日本ホスピス・在宅ケア研究会第10回九州大会で発表した。また、ターミナルケアに関する論文を集め、在宅ホスピスの対象の拡大の必要性を確信した。宗教とターミナルケアの関係については、日本では宗教的バックグラウンドが希薄で、それが死生観の形成に影響しており、よりよい死のためには、よりよい死生観の思想的バックボーンの形成が急務と思われる。看取りの場は、病院に著しく傾斜しており、ホスピスも限られている。特別養護老人ホームでのターミナルケアも問題点があり、今後ユニットケア、在宅での、地域を基盤としたターミナルケアの実現が必要で、しかも都市部だけでなく過疎地にも等しくターミナルの生活の質を保証するための保健医療福祉の連携が必要であることが示された。 インタビュー法では、ヒンドゥー文化圏における死後の魂の行方について貴重なデータを得られた。また、お盆に類似するバリ島のウリヤン、インドのナヴラトレ、モハラヤタルポンなどの存在が確認された一方で、インドの大学生に、輪廻や霊を否定する人が多いことに気づかされた。インドにおける世代間の隔絶は大きい。イスラムの影響は神が一つであるという意識にあると思われる。ジャワ島においても世代間の隔絶があり、若い世代はよりイスラム的であるが、老人の世代は霊にお供えをすることが見られた。
|