研究課題/領域番号 |
13571015
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
内藤 正典 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 教授 (10155640)
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研究分担者 |
宮地 尚子 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 助教授 (60261054)
関 啓子 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 教授 (20107155)
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キーワード | 文明間対話 / イスラム / ロシア / ヨーロッパ / 中央アジア |
研究概要 |
本研究は、西欧世界とイスラーム世界との関係を中心に、文明間の対話を促進する上で、現実に何が障壁となっているのかを分析し、対話促進に必要なものはなんであるのかを解明することを目的としている。本年度は、この観点から、トルコおよびアルメニア、ロシア等において学術調査を実施した。1.トルコにおいては、11月にイスラーム政党(公正発展党)が総選挙で圧勝し、12月のEU首脳会議でトルコの加盟が延期されたことが、トルコ国民にいかなる影響を与えているのかを実証分析した。その結果、建国以来80年にわたる西洋化志向に明らかな転換が起きていることが明らかとなった。その変化は、第一にヨーロッパ志向の相対化であり、第二にはイスラーム政党を支持しつつも、イスラーム復興主義を直ちに政治に反映させないというイスラーム政党の新たな方向性の提示であった。しかしながらアメリカの対イラク戦の動向如何では、政権がイスラーム復興主義に傾斜する可能性があり、反米感情の高揚と軍部の動向が、今後の文明間対話の成否を分ける鍵となる可能性が高いことが判明した。2.アルメニアおよびロシアにおいては、プーチン政権下でテロとの戦争を標榜しつつチェチェンなどイスラーム勢力との衝突が顕在化するなか、ロシアがイスラーム・テロとの戦いという文脈で、アメリカの単独行動主義を追随する現象がみられることが明らかとなった。また、アルメニアのように、非ロシアのキリスト教国家においては、アゼルバイジャンや北カフカスなど近隣のイスラーム諸国におけるイスラーム復興現象への危機感が強く、従来のアゼルバイジャンとアルメニアという民族対立が、宗教間対立に変容する危険が存在することが明らかとなった。
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