研究概要 |
本調査は、ペルー国アンカシュ県ヤンガヌーコ遺跡複合(海抜3850-3950m)の発掘調査を行うことによって、この地域が、先史時代のペルー北海岸で大量に制作された金製品の材料を供給したのではないかという仮説を検証するとともに、本遺跡周辺の先史時代の様相を明らかにすることを目的に行われた。 平成13年度は、ほぼ1×2kmの範囲にわたって測量と踏査を行い、本遺跡が金鉱山に接した遺跡であり、採鉱・選鉱活動が行われた可能性があることを確認した。平成14年度においては、海抜高度約3850mに広がる3つの区域(A,C,D)の発掘を行い、西暦紀元後10世紀から14世紀ごろ、本遺跡南西部の一部(A区)が金製品制作と関わりの深い北海岸起源の集団によって、一部(C区)は本地域(カイェホン・デ・ワイラス地域)固有の集団によって住まわれたこと、また、諸遺構の基部に深く堆積したパウダー状の砂から鉱物を分離し、ここで金の選鉱が行われたという可能性を示唆した。 平成15年度の調査は、祭祀複合と思われたG区(海抜3950m)を発掘すると共に、調査中に遭遇した墳墓3基(H区)を調査した。その結果、本遺跡複合が、形成期末期(西暦紀元前500年から200年ごろと推定)まで、その居住と利用の歴史を遡ることを明らかにすることができた。特筆すべきは、夏季に多雨となるこの地域で、墳墓から織物の断片を発見するとともに、装身具を発見し、その原料分析から、この地域が特に北海岸地方と古くから交易関係をもっていたことが証明されたことである。本調査の成果はいずれもこれまで全く知られなかった事実を明らかにしている。今後は、この知見をもとにさらに調査を行うことによって、中央アンデス地域の古代史を書き換えることができるだろうと期待される。
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