今年度の活動は大きく二つに分けられる。個別の調査活動と、国際シンポジウムの開催である。 1.個別の調査活動 豊田・川崎と研究協力者である岩本が、パプアニューギニアで住民の戦争記憶に関する調査ならびに文献調査を行った。また岩本はオーストラリアおよび日本で戦争に関する文献調査を行った。パプアニューギニアにおいては、現地住民の戦争経験が地域によってかなり異なっていること、戦争体験者の語りが現地住民のその後の民族観形成に大きな影響を与えていることなどが明らかになった。また、現地住民の戦争経験に関する資料としてパトロール・レポートの重要性が明確になった。 2.国際シンポジウム 2001年12月に立教大学で「パプアニューギニアにおける太平洋戦争:歴史認識と実態」という国際シンポジウムを行った。発表者として日本からは豊田・市川と岩本、オーストラリアからは海外共同研究者であるH.ネルソン、S.カイマ、ならびに別の研究助成で来日中のP.スタンレー、P・ロンディー、B.アレン、それに田村が参加した。ここで明らかになったのは、戦争に対する認識が日本人、オーストラリア人、現地住民で大きく異なることであり、それぞれの認識の差は戦争時の状況によって大きく影響されていたことである。またこの三者だけでなく、太平洋戦争には当時現地に在住していた華人も大きな関わりを持っていたことが明らかになった。オーストラリア戦争記念館では他民族・他国民の戦争認識の研究の成果をふまえ、戦争の展示方法を模索していることが報告された。
|