今年度の活動は、個別の調査活動と、国際シンポジウムの準備との二つに分けられる。 1.個別の調査活動 川崎と、研究協力者である岩本・市川が、パプアニューギニアで住民に対する聞き取り調査ならびに文献調査を行った。住民の戦争体験や戦後補償運動についての聞き取りを中心として行った。また岩本はオーストラリアで戦争に関する文献調査を、豊田は日本で、戦争に関する文献調査ならびに慰霊団参加経験者に対するインタビューを行った。以上のことから、現地住民の戦争経験が地域によってかなり異なっていること、住民の戦争経験に対する記述が日本、オーストラリア側で大きく異なること、慰霊団による現地訪問、比較的近年に発生している戦後補償運動が現地住民にどのような影響を与えているかが明らかになった。 2.国際シンポジウムの準備 2003年3月にオーストラリア国立大学で「パプアニューギニアにおける太平洋戦争」という国際シンポジウムを行う予定であった。都合によりこれは次年度に延期となったが、日本からは発表者として岩本、豊田が参加し、オーストラリアからは海外共同研究者であるH.ネルソン、P.スタンレー、P.ロンディー、B.アレンらが参加する予定であった。この準備で以下の点が明らかになった。まずオーストラリア、日本側でPNG現地住民の戦争経験に対する記述が異なることであり、その違いはそれぞれの戦争認識の差が影響していると考えられることである。また戦争に参加したインド兵の状況、日本軍従軍看護婦の状況などが明らかになった。
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