研究課題/領域番号 |
13571034
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
常木 晃 筑波大学, 歴史・人類学系, 助教授 (70192648)
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研究分担者 |
赤羽 貞幸 信州大学, 教育学部, 教授 (40089090)
滝沢 誠 静岡大学, 人文学部, 助教授 (90222091)
三宅 裕 東京家政学院大学, 人文学部, 助教授 (60261749)
久田 健一郎 筑波大学, 地球科学系, 助教授 (50156585)
中村 徹 筑波大学, 農林学系, 教授 (60015881)
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キーワード | レヴァント / シリア / 新石器時代 / 都市形成 / 社会の複雑化 / テル・エル・ケルク遺跡 / 封泥システム / 専業化 |
研究概要 |
研究代表者らが1997年以来、シリア文化財博物館総局と共同で調査研究を進めている北酉シリア、エル・ルージュ盆地に所在するテル・エル・ケルクは、酉アジア新石器時代で最大級の集落遺跡である。これまでの発掘調査で、都市的な巨大社会の出現や社会の複雑化、職業専業化などのプロセスを追求するための重要な遣跡であることが判明している。本研究でおこなっている第2次3ヵ年調査では、この巨大な新石器時代集落の形成過程、社会統治システムの解明を目的としている。 第2年次にあたる平成14年度は、、7月下旬からの2ヶ月間にわたって現地での発掘調査、出土遺物の整理研究を実施した。発掘調査は、長期にわたって継続中のテル・エル・ケルク北部に位置するテル・アイン・エル・ケルクの中央区E271-E311グリッド、北西区D6グリッドを中心として行い、これに加えてG162-G162グリッドでトレンチ調査をおこなった。またこれら新石器時代集落調査とは別に、テル・エル・ケルク1号丘北裾のK182-Kl83グリッドで盗掘を受けたビザンツ時代の遣構の保存整備調査も実施している。 北西区D6グリッドでは、テル・エル・ケルクでの最古の新石器時代層が先土器新石器時代B(PPNB)前期(紀元前8000年紀)までさかのぼることが確認された。北西シリアでPPNB後期を遡る初めての例であり、北酉シリアの新右器化がレヴァントの他地域に比して遅れることなく開始されていたことが証明された。中央区では土器新石器時代中期に帰属する墓がまとまって検出されるとともに、同時期の入念に作られた白色プラスター床の建物群が密集していた様子が明らかにされた。出土した2点の精巧に彫刻された石製動物小像は、ケルクに居住した新石器時代人たちの高い技術や芸術性を示している。G161-G162グリッドではPPNB後期の集落が予想を越えて西側に広がっていたことも判明している。
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