研究課題/領域番号 |
13571035
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西秋 良宏 東京大学, 総合研究博物館, 助教授 (70256197)
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研究分担者 |
吉田 邦夫 東京大学, 総合研究博物館, 助手 (10272527)
小口 高 東京大学, 空間情報科学センター, 助教授 (80221852)
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キーワード | 国際研究者交流 / シリア / 新石器時代 / 農耕牧畜の起源 / メソポタミア / 考古学 / 先史土器 / 打製石器 |
研究概要 |
実績概要 北メソポタミアの一角、シリア東北部ハブール平原にあるテル・セクル・アル・アヘイマル遺跡の第3次発掘、地理学的調査ならびに採集標本の解析、年代測定などをおこなった。その結果、以下の新知見を得た。 (1)居住の開始は遅くとも先土器新石器時代B期後半にさかのぼる。さらに下層に3m以上の堆積が未発掘のまま残されていることを考慮すると、この遺跡がシリア領メソポタミア最古の定住村落であることは確実である。したがって、人類が文明発祥の地メソポタミアの平原環境をいつ、どのように開発し始めたかを知るための無二の手がかりが得られつつある。 (2)最古の集団の先土器新石器文化は、7900BPごろ土器新石器文化に移行した。土器新石器文化は遺物からみて、前半と後半にわかたれる。先土器新石器時代後半・土器新石器時代前半までの文化伝統は北シリア、アナトリアと類似していたが、同後半以降はイラク領北メソポタミアに分布の中心を持つプロトハッスーナ伝統へと移行した。プロト・ハッスーナは北メソポタミアに初めて広く分布した文化伝統であることが知られているが、その出現の様相が当遺跡で具体的にとらえられる可能性がある。 (3)土器新石器時代後半以降、この遺跡は放棄された。次の居住時期は銅石器時代後半である。この間の地理学的調査結果によれば、無人の時期には湿潤化の証拠が得られた。降雨量が増加したためハブール川の氾濫が生じ、一時期、居住が困難になった可能性が示唆される。この遺跡の研究を通じて、地理学的研究と文化史的研究の良好なコラボレーションの実例が示しうる。
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