(目的)本研究の目的は、インドネシア共和国西ジャワ州タンジュンサリ県において1988年-89年に出生した小児コホートを利用して、インドネシア小児の発育値および成熟度調査を行い、インドネシア標準成長曲線の開発を行うことにある。 (方法)本年度は、研究代表者は、研究協力者の渡辺洋子(国際協力事業団・インドネシア母と子の健康手帳プロジェクト・チーフアドバイザー)、Anna Alisjahbana(パジャジャラン大学医学部・教授)とともに現地保健所医師およびヘルスワーカーを指導し、主に現地事情に詳しい保健所医師およびヘルスワーカーの手により体重測定および身長測定、思春期前期の性発達などのアンケート調査を行った。また、得られだデータを、出生時および乳幼児期の疾病歴や発育歴と比較検討した。 (結果)コホート集団の12歳での身長と体重の平均は、日本人12歳の身体測定値、ならびにNCHS/WHOの身体基準値と比べて、男女ともかなり小柄であり、特に身長の低さが目立つstuntingの状態であった。本コホートの発育曲線を、日本人ならびにNCHS/WHOの発育曲線と比較してみると、本コホートは日本人の1920年の、またNCHS/WHOは日本人の1980年の曲線とほぼ一致する事がわかった。すなわち本コホートと日本で80年の差が認められた。また、性成熟の発現度合いに出生時の体重は関係がみられなかった女子の生理は身長の成長速度がピークに達した後鈍化し始めた頃に起こるとされているが、このことから、身長や体重の有意な差(LBW群のほうが小さい)は成人期になっても同様である事が示唆された。。また貧血の割合にも差はみられなかった。 (考察)本コホートは今後も経年的に身体測定の調査を継続する計画である。自国民族の成長曲線基礎データを持つのが難しい途上国において、インドネシア国における正常小児における身体発育基準値のひとつとなることが期待される。
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