研究概要 |
タイ国では、近年yaabaaと呼ばれる覚せい剤(ATS)の乱用が国の存亡に関わると懸念されるほど重大な問題となっているため、薬物乱用防止教育を行うことが焦眉の急である。さらにタイの児童青少年の薬物乱用者が増々増加していることも深刻な社会問題となっている。そのためタイ国教育省は、学校からの習慣性薬物、猥褻メディア、暴力等の追放及び教師、児童生徒のリーダー、保護者、警察、地域の指導者等が組織的に活動することによって効果的に薬物乱用防止教育を推進する「白い学校」計画を2000年より全国的に実施することを通達した。従って、この薬物乱用防止教育運動の実施は開始されたばかりであるが、本研究において得られた結果は以下のとおりである。 1.「白い学校」計画の影響により生徒らはATSの名前を授業でも知る機会を多く持っている。 2.「白い学校」計画は薬物に対する肯定的な態度を抑制する効果があるようであった。 3.「犯罪意識無し」群の薬物使用・所持に対する影響に関しては必ずしも効果を上げているとは言い難い結果であった。 タイ国保健省疫学部による報告によれば、1998年1月現在のタイのAIDS患者数累積数は78,256人であり、この内死亡者は20,37人である。感染経路別では、性的接触による感染が最も多く82.2%を占めている。次いで静注薬物乱用者(IVDU、IDU)が5.6%、母子感染が5.2%となっている。また、主要5県によるHIV感染定点サーベイランスの結果得られた、各種集団の感染率の中央値では、IVDUの感染率が、1989年6月から1997年6月まで30-40%の範囲に存在しており、1994年12月を除き最もHIV感染率の高い集団であることがわかった。タイ国においては薬物乱用とHIV感染は非常に密接に関わっていることが明らかである。
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