1 調査の概要-4年間におよび合計7回、現地調査を実施した。国語副読本に関する所蔵資料一冊ごとに、書名・編著者名・発行年月日・発行所・定価・ページ数などを基礎データとして書き出すとともに、書物・雑誌の一部(表紙が中心)を撮影したりした。 2 調査の内容-国語教科書を中核にして、(1)教科書教材を解説・解釈した学習参考書・ハンドブック・学習の手引き、(2)教科書教材を問題集の形にしたワークブック・自習書、(3)その周辺を成す児童読本・読み物、さらに(4)教師用教授書、古文・漢文などは一般的な解説書・研究書として発行されたものも大量に所蔵している。本研究では、これらを合わせて「副読本」として認定している。国定教科書の発行さえままならなかった戦後初期に、こうした副読本がカラー印刷され、多種・多量に発行されていたこと自体すでに驚きであるが、内容としても充実したものになっており、当時の教育関係者の並々ならぬ努力の跡がうかがわれる。 3 調査の意義-プランゲ文庫所蔵の資料を用いた研究としては検閲研究がその代表的なものであるが、同時に戦後初期の出版状況を知りうる研究としても重要な資料を提供するものと確信した。当時出版された書籍・雑誌のほぼ全てが事前検閲の資料として、GHQの検閲担当部門CCD(民間検閲部)に提出が義務づけられたその提出原本が、参謀二部(G2)歴史部部長プランゲ博士によってメリーランド州立大学に保存されている。日本国内に保存・所蔵されていない書籍・雑誌・資料が大量に保存されている。本調査の対象としている副読本は、その大部分か国内の研究機関には所蔵されていなくて、その実態を知るためには、このプランゲ文庫の調査を経るしかない。その意味において、本調査研究は、国内での研究の限界を大きく補完しうるものであった。
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