本研究の所期の目的である終末及び死後の葬送に関する生前準備の進展と実際を各国において調査することによりその定着度は、タブーから脱皮し、人生終結のためのプランニングとして確実に進展しつつあることを捉えることができた。自己意思を自分の終末医療に反映させるだけではなく、自分の死後の一連の葬送に対して主体的にデザインして置くことが、ある一定の市民権を得たということができる。それは、従来からの遺言書の作成がより積極的に行われるようになったことにも現れている。 中国においては、終末期医療とケア(介護)に対する法制化されており、本人の意思中心のケアシステムの確立を側面から推進しようとしている。しかし自分の葬送に意思を残すいわゆる「生前契約」は、みられない。アメリカにおいては、これまでの研究成果を起点として、終末期医療への持続的委任および生前契約の質的把握を試みたが、本年度においては、十分な成果を得ていない。次年度の課題としたい。また、イギリスにおける現状は、本人による生前の葬送プラン作成が徐々に一般的になってきつつあることと、遺族サービスとしてのグリーフ・サービスが注目される。"Cruces Bereavement Care"などが組織化され、遺族ケアシステムが築きあげられつつあることが本研究によりわかった。イギリスにおいても確実に生前契約は増加の一途をたどっており、新たな潮流として注目される。特に1990年代後半からは急増を示し、FDの支援サービスによりFuneral Planning Trustに加入する比率は、1999年には1995年の4.5倍を越える勢いであり、イギリスのこの動向は注目に値する。本研究が意図した「自分の終末・葬送を高齢者自身が考える」ということは、欧米に限らず、先進国に追随する国々においても確実に進行中である。ただし、欧米とわが国および中国ではケアに関する意識、葬送習慣の違い等により、その理念や方法、進展の度合いも異なる。本年度は、その実態を把握し、法制も合わせ分析した。
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