研究課題
基盤研究(B)
本研究においては、ヨーロッパの統合のなかにおける地域の自律化の様相をまず確認し、それがEUの地域政策とどのように関連しているかを考察した。次いで、その自律性を増した地域が、独自にどのような地域開発を展開しているかを探り、その地域の発展の条件として文化やアイデンティティがどのように作用しているかを検討した。対象として地域は次の8つである。イングランド(英)、ウェールズ(英)、ワロニー(ベルギー)、ブルターニュ(仏)、アルザス(仏)、コルシカ(仏)、カタルーニャ(スペイン)、南ティロル(伊)。さらに、さまざまな都市問題を抱えつつ、新たな文化の誕生の場となっている都市地域にも注目し、イル・ド・フランス(仏)をも対象とした。われわれのサーベイの結果では、次のようなことが明らかになった。1)EUの地域重視政策と地域内在的理由により、多くの地域で分権化が進んでいる。典型的な例はイギリスのイングランド、ウェールズである。2)またEUの少数文化振興政策の結果、地域のアイデンティティと文化(特に言語)が活性化されている。ウェールズやブルターニュでは、地域のメディア、経済活動、教育のあり方にも影響を及ぼしている。3)かつて領土的・言語的紛争の地であった地(南ティロルなど)では、<ユーロリージョン>の創設により、文化の平和裏の共存がみられるようになった。4)一方、都市的地域では、移民やそのマイノリティが多数居住することで、多文化的状況が生まれ、若者たちの新しい芸術活動がみられるとうになっている。これもヨーロッパの新しい地域文化の誕生であろう。
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