本研究の目的は児童虐待防止に関与する海外の非政府組織(NGOと)と、その行政機関(GO)との連携に関する実態を把握・分析し、その結果をもとに日本の現状と照らし合わせながら、日本の子どもの虐待防止関連NGOの今後の課題と方向性を検討することにあった。 そのため3年間にわたる本研究では第1に資料収集ならびに文献研究を行い、第2に、児童虐待防止先進国である米国・英国、そして英国の影響を受けて早くから虐待防止に努めている香港で、第1次・第2次・第3次予防を担っている代表的組織(38件のNGO・22件のGO)を訪問し、その背景・活動状況・職員構成/財政・行政機関との連携・ボランティアリズムと専門性などについて聞き取りり調査を行った。また第3に、世界各国(N=54)におけるNGOによる児童虐待防止活動の一般的傾向を明らかにするため、質問調査を実施した。 これらの調査の結果、(1)文化・歴史・地域性・法的背景の相違に関わらず、各NGOは第1・第2・第3予防のうち2つ以上の分野で自らの秀でた専門性を発揮し、それぞれの子どもと家族のニーズに合った個別のサービスを提供していること、(2)虐待防止先進国の場合、「NGOとGOのパートナーシップ」は我が国のそれとは異なり、NGOはGOから相当な額の補助金を受理した上で、その契約に基づいた委託事業を行っていること、(3)GOは、効果測定の結果でサービス提供の成果があったNGOのみと契約の更新をする傾向にあること、(4)例外はあるものの、概してどの国の児童保護システムをみても、措置権を持つGOが虐待ケースの調査/介入を担っており、NGOはGOによるケースマネジメントのもとに、調査/介入以外の分野でサービス提供を行っていること、などが明らかになった。 本研究の最後に日本の児童虐待防止関連政策に関して、(1)国・都道府県・市町村レベルでの補金を伴ったNGOとのパートナーシップの再構築、(2)学校基盤型の第1次予防の強化、などを盛り込んだ提言を行った。
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