研究概要 |
13年度に北京、上海でアンケート調査したのに引き続き、14年度は甘粛省蘭州および遼寧省瀋陽にて、下崗労働者に対するアンケート調査を行った。さらに蘭州および瀋陽で労働局の担当者に当該地での下崗労働者の実態についてのヒアリングを行い、また蘭州では2つの国有企業を訪問し、労働(下崗)問題について調査した。また瀋陽では下崗労働者にインタビューを行った。 13,14年度の調査およびアンケートを解析した結果をもとに、馬駿らは02年10月に中国・西安で行われた中国経済学年度報告大会にて、報告を行った。また03年1月に富山大学極東地域研究センター主催のワークショップで「中国経済の強さと弱さ」という共通テーマのもと、「中国の失業問題」について、中国人民大学労働人事学院姚裕群教授らを招いて次のような報告を行った。「中国の失業問題」(今村弘子)「中国の国有企業改革と失業問題」(姚裕群)「失業問題の実態調査研究」(馬駿)と題して各々報告を行い、大阪経済大学経済学部山本恒人教授がコメントを行った。 アンケート調査から明らかになったのは、(1)いづれの都市も40代の女性の下崗労働者が多いこと、(2)北京、上海では労働市場が発達していることから、若年層では再就職が比較的容易であること、(3)下崗期間が長くなるほど、再就職が困難であること、(4)北京、上海では企業業績が良好であるのに下崗された者は、本人の能力の問題から再就職が難しいこと、などが観察された。今後は国有企業改革と下崗労働者の問題、および失業保険の実態を明らかにすると共に、アンケート調査に関し、なお詳細な解析を行うこととする。
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