13年度に北京、上海で、14年度に甘粛省蘭州、遼寧省瀋陽で、各々1000〜1300名の下崗(レイオフ)労働者に33項目にのぼるアンケート調査を行い、また下崗労働者にインタビューし、国有企業でヒアリングを行った。上記アンケート調査をもとに解析を行うとともに、国有企業改革や中国の労働問題についての全体像を把握すべく、資料収集および分析を行った。 上記調査に基づいて、馬駿は、2003年12月、上海復旦大学で開催された中国経済学会第三回大会で「上海市と瀋陽市の下崗労働者の失業期間に関する比較研究〜アンケート調査をもとにして」(中国語)を発表した。 アンケート調査の解析の結果、(1)いづれの歳でも40代の女性の下崗労働者が多いこと、(2)北京、上海では労働市場が発達していることから、若年層では再就職が比較的容易であること、(3)下崗期間が長くなるほど、再就職が困難であること、(4)北京、上海であっても、企業業績が良好であるのに、下崗された者は、本人の能力に問題がある場合が多く、再就職が難しいことが、明らかになった。 さらに国有企業改革によって、下崗労働者が増加している実態、再就職訓練センターが順次廃止されていくなかで、失業保険の整備が急務であるが、失業保険を給付されている人は5割にも満たないにもかかわらず、失業者の数が増していることから、基金が減少しており、今後益々深刻になること、また失業問題は、中国では「都市」の問題とされていたが、実際には農村でも深刻であり、今後都市における建設ブームが下火になったときに、出稼ぎ労働者の受け皿がなくなり、かつ農村での社会保障が極めて不十分であることから、社会不満が高まる可能性も明らかにした。
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